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2005年3月1日          医療マネジメント学会News Letter            第20号(5)
セミナー開催報告
第3回電子カルテセミナー
−DPC対応電子カルテシステム−
NTT SI基盤研究所 津村 宏

 医療マネジメント学会のメインテーマの一つである電子カルテシステムは、各種展示会・セミナー等が開催されるほど重要なシステムです。その普及を推進するためには、付加価値を高めていくことが重要で、その一つにDPCや医療連携にどう対応していくかということがあります。そこで第3回電子カルテセミナーを2004年1月22日こまばエミナース(東京)で、「DPC対応電子カルテシステム」をテーマに開催しました。


会場風景

 特別講演1:厚生労働省保険局医療課企画官中村先生は、医療政策面から「DPCのねらい」と題して講演されました。平成15年4月に導入された診断群分類を活用した包括支払い方式であるDPC制度は、診療報酬制度の簡素化、EBMの推進、患者の情報提供の推進など期待されるものが大きい。しかし、包括支払い方式では構造的に懸念される粗診粗療、患者選択、アップコーディングなどの課題もあり、慎重な検証作業のもとに推進する必要がある。これらの諸課題と期待されるDPCの展開について概説されました。
 特別講演2:千葉大学名誉教授里村先生は、「DPCで病院情報システムは進化する」と題して講演されました。医事会計に始まった日本の病院情報システムは、30年が経過し電子カルテ時代に差し掛かっている。DPCの下では、病院は医療資源の効率的利用を追求する一方で、診断根拠や治療法選択の理由、安全対策などの説明などが必要となる。従来から、レセプト情報と診療記録の乖離が問題とされてきたが、包括評価の下では一体化した新しい概念のシステム構築を迫られている。いずれ、医事会計システムは消滅して、診療録管理と院内グループウェアが病院情報システムの基盤となると解説されたのが印象的でした。
 午後の部の演題1では、ニッセイ情報テクノロジーからDPC制度導入を行った病院の事例を踏まえつつ、同社の医療ソリューションの紹介がありました。DPC制度導入が、業務フローや役割・機能の見直しを含めた院内業務全体に大きなインパクトを与えていて、またその基盤として情報連携やデータ活用に向けたIT化への取り組みが不可欠であると解説されました。
 演題2では、東芝のDPC対応医事会計システムHAPPY CS-Vを初めとしたシステムが紹介されました。DPC導入前の収支シミュレーション、DPCとクリティカルパスの関連、DPCデータの病院経営への活用など、システムの画面を提示しながら解説されました。
 演題3では、NECの業務フロー提案型電子カルテソリューションMegaOak-BSと、個別仕様アプローチ型電子カルテソリューションMegaOak-CSを概説し、その中でDPCへの対応を紹介されました。
特に、診断群分類の決定への入力画面など詳細に大変分かりやすく説明されました。
 DPC制度は、わが国の診療報酬制度の新たな試みであり、今回のセミナーは、今後の電子カルテシステムのあり方を考える上で有意義なセミナーでした。


第18回クリティカルパス実践セミナーin熊本
−クリティカルパスの概念・必要性の理解と作成活用能力の向上−
国立病院機構熊本医療センター研修部長 清川哲志

 第18回のクリティカルパス実践セミナーが2月16日、17日の両日、国立病院機構熊本医療センターで開催されました。北海道から鹿児島まで84名の医師、看護師、医療関係者が研修に参加しました。クリティカルパスは西高東低、西日本での取り組みが先行していますが東日本からも10名以上の参加者があり、全国的にクリティカルパスの普及していることが窺われました。今回の研修では3カ所の大学病院からの参加があり、DPC対策としてクリティカルパスの導入が注目されていることを実感しました。
 実践研修は3部構成で、1日目での集中講義と病院の見学、2日目の参加者によるクリティカルパスの作成からなっています。集中講義では、宮崎久義理事長はじめ4名の講師からクリティカルパスの導入法、作成や活用のポイントについて講義がありました。クリティカルパスを新しい医療「目標達成型医療」のツールとして認識して導入、作成、活用することの重要性が各講師から強調されました。
 病院見学では、病棟でのクリティカルパス運用の実際を見学の後、院内で定期的に開催されているクリティカルパス研究会に参加して、病院のシステムとして、どのように院内の取り組みを活性化しているのかを体験してもらいました。
 翌日はグループに分かれてのクリティカルパス作成と発表を行いました。クリティカルパスの内容を決め、達成目標を検討し、知恵を出し合いながらグループワークで、パソコンの作成ソフトを利用して3時間で作り上げました。グループでの議論で、各参加者の考え方の違いが浮き彫りになり、その中から意見を集約していく過程が重要であることを実感してもらいました。
 参加された方々は、みんな同じような問題を抱え、その解決に悪戦苦闘していますが、実践研修での経験が少しでも役に立てばと考えています。回を重ねている実践研修の達成目的は「医療における達成目標の重要性を理解してもらう」ことであり、クリティカルパスはそのためのツールであるともいえます。新しい医療へ向かうために、多くの医療者の実践研修への参加をお待ちしています。



グループワーク風景