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2005年3月1日          医療マネジメント学会News Letter            第20号(4)
セミナー開催報告
第16回クリティカルパス実践セミナーin京都
−クリティカルパスの概念・必要性の理解と    
    作成活用能力の向上−
京都第一赤十字病院脳神経外科部長 垣田清人

 2004年8月28、29日 京都の残暑厳しい中、京都第一赤十字病院大会議室で、第16回のクリティカルパス実践セミナーが行われました。会場の都合もあり、当初50名で募集しましたが、受付開始後数日で定員オーバーとなり、60名まで枠を広げ実施のはこびとなりました。多くの方のご希望にそえなかったこと深くお詫び申し上げます。当日の窓口に、直接会場にこられ、その熱意さにお断りすることもできず、急遽10名の席を追加して、70名の参加者となりました。会場が、混雑した分、熱気にもあふれ、より意義あるセミナーとなりました。


グループワーク風景

 初日の座学は、次のとおりです。
@講演T「クリティカルパスに何を期待するか」
 医療マネジメント学会理事長 宮崎久義
A講演U「クリティカルパスとは−クリティカルパス・ライブラリーの活用を含めて−」
 京都第一赤十字病院脳神経外科部長 垣田清人
B講演V「クリティカルパスと記録」
 国立病院機構熊本医療センター副看護部長
             中重敬子
C講演W「クリティカルパス活用の実際」
 福井総合病院副院長 勝尾信一
D講演X「クリティカルパス作成・活用のポイント」
 国立病院機構熊本医療センター統括診療部長
             野村一俊
 同日夕より、三十三間堂近くの京都パークホテルで、照明に照らし出された日本庭園をフルオープンの窓越しに眺めながら意見交換会が行われました。このパークホテルは、終戦後、現京都第一赤十字病院施設が、米軍に接収されていた頃の仮病院の跡地となります。ここで翌日のグループワークの自己紹介と、テーマの検討をおこないました。
 2日目(29日)には、朝早くから、テーマとなったクリティカルパスを、アドバイザーの助言を得ながら作成していただき、職種を超えて共同で作り上げることの意義を少しでも感じ取っていただけたものと思います。他施設との治療に関する意見の交換は、また新鮮で、考え方を変える一つの機会になったのではないでしょうか? 参加者および講師の先生方には、暑いさなか熱心に取り組んでいただき意義あるセミナーにすることができました。せっかくの京都でしたが、二日間の濃厚なスケジュールで、散策もできなかったかと思います。
 この会で身につけられた知識を元に、各施設でクリティカルパスのリーダーとして活躍いただけるものと期待しています。
 最後に、会の運営に携わった京都第一赤十字病院のクリティカルパスリーダーにも、この場を借りて感謝いたします。


第5回リスクマネジメントセミナー
−リスクマネジメントの新たな展開−
国立病院機構長野病院副院長 武藤正樹

 毎年11月の医療安全週間にさきがけ、平成16年11月6日に第5回リスクマネジメントセミナーが国立国際医療センター(東京新宿)で開催されました。会場には200名以上の参加者を得て、終始熱心な討議がくりひろげられました。
 基調講演1は厚生労働省医政局総務課医療安全推進室の北島智子室長より同省のヒヤリハット事例収集事業の報告がありました。これまでにこの事業では特定機能病院や国立病院機構病院より10万件以上のヒヤリハット事例を収集して、その分析を行っています。その報告がなされました。
 基調講演2では国立保健医療科学院の長谷川敏彦部長より、医療安全の新たな展開に関する講演がありました。長谷川部長はこれまでの医療安全の取り組みを整理し、将来展望について述べました。部長によれば医療の質や安全は病院経営のアウトプットそのものであり、経営の本質的な課題であるといえましょう。
 事例検討1では慶応義塾大学医学部医療政策・管理学教室の池田俊也講師より、患者有害事象の疫学調査であるカルテレビューの現状の報告がありました。平成15年度に行われた予備調査では7病院、700冊のカルテについて調査がなされ、把握できた有害事象件数は79件(11.3%)であったとのことです。
 事例検討2ではNTT東日本関東病院の坂本すが看護部長より厚生労働科学研究で行われた医療機関の安全管理体制の実態調査が報告されました。報告によればインシデント・事故報告体制はすでに90%の病院で導入されています。またマニュアル整備や研修も実施されていますが、インシデントはマニュアル整備後は一時的に減少し、やがて元のレベルまで戻る現象が繰り返されるとのことです。
 事例検討3では国立病院機構熊本医療センターの辻里美リスクマネージャーより、新人看護師のインシデント報告の傾向と医療安全教育の実際が話されました。新人のインシデントレポート提出割合は全体の18.9%を占めていてトップです。内容は注射、転倒転落、チューブドレーンが多く、新人教育による介入について報告がされました。
 事例検討4では武蔵野赤十字病院の杉山良子リスクマネジャーより、メーカーとともに取り組んだ安全対策が報告されました。医療機器や設備について医療機器メーカーにユーザーとして安全性や使いやすさについて積極的な意見をのべることが改善につながった事例の報告がされました。
 事例報告5は三井記念病院がん化学療法認定看護師の慎玉姫さんより、バーコードリーダーを利用した患者みずからが化学療法剤を確認できるシステムの紹介がありました。
 ところで2004年より雑誌「医療安全」がエルゼビア・ジャパン(株)より創刊されました。本雑誌は医療マネジメント学会医療安全委員会(委員長 坂本すが)の編集企画ですが、本リスクマネジメントセミナーの模様もこの雑誌にいずれ掲載されると思います。このため本雑誌も本セミナー同様、ご利用していただければと思います。

会場風景