DPC対応型クリティカルパス特別セミナー報告
国立長野病院副院長 武藤正樹
平成15年10月25日に国立国際医療センターで、医療マネジメント学会主催によるDPC特別セミナーが開催されました。DPC(診断群分類別包括支払い)が特定機能病院に今年4月に導入されて以来、半年を経過して、その影響が出始めています。 DPCはいずれ急性期病院全体に波及するとの予測もあって、会場には200人を超す参加者の熱気であふれました。
基調講演1では今回のDPC設計の立役者ともいえる産業医科大学医学部公衆衛生学教室の松田晋哉教授よりDPCの解説と、今後、DPC分類にリンクした臨床指標の設定の必要性やクリティカルパスの公開が医療の質の測定に必要との考えかたが示されました。基調講演2では国立熊本病院の野村一俊研修部長より、クリティカルパスの概念と特にアウトカム設定の重要性が強調されました。
事例発表1では札幌医科大学医学部放射線医学講座の藤森研司講師より、同大学附属病院におけるDPC対応策が次のように示されました。@外来診療の活用、Aクリティカルパスの活用、B医療経済を意識すること、C説明責任を果たすことが必要。事例発表2では慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室の池田俊也講師により、慶應義塾大学医学部附属病院のDPC対応がのべられました。同附属病院では49のクリティカルパスが完成、18のクリティカルパスが準備中であるということです。また7月より後発医薬品3品目を採用することで、年間7,360万円の医薬品費の削減ができるということです。事例発表3では、徳島大学医学部附属病院産婦人科の桑原章先生より同附属病院のクリティカルパス・ワーキンググループによるクリティカルパス導入について、その現状と問題点が語られました。看護部中心でおこなってきたクリティカルパス・ワーキンググループではDPCに対応するには限界があり、病院全体での取り組みの必要性が強調されました。事例発表4では鹿児島大学大学院医療システム情報学の熊本一朗教授により、同附属病院のDPC対応型オーダリングシステムや病院経営支援データーウェアハウスにおけるDPC決定支援やDPC別原価計算が行われている現状が発表されました。
特別発言1として国際疾病分類学会会長の神津仁先生より、DPCの基礎となるICDコーディングとその専門職であるクリニカル・コーディングスペシャリストの養成の必要性が述べられました。特別発言2が厚生労働省保険局医療課中村健二企画官により行われ、盛況のうちにセミナーを閉じました。
会場風景
第4回リスクマネジメントセミナー報告
―医療安全の新たな展開―
国立長野病院副院長 武藤正樹
平成15年11月8日、第4回リスクマネジメントセミナーが国立国際医療センター(東京都新宿区)で、全国より200名以上の参加者を迎えて開催されました。このセミナーは例年11月下旬に行われる医療安全推進週間に先立って医療マネジメント学会が主催しているセミナーです。
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基調講演 岩崎康孝 先生
今回のセミナーの基調講演1では今年8月より厚生労働省医政局総務課医療安全推進室長に就任した岩崎康孝先生より、これまでの厚生労働省の医療安全に対する取り組みと今後の予定について講演がありました。講演のなかでは現在、医療事故事例の報告制度が検討されていること、また医療事故頻度に関する疫学調査がすすんでいることなどが述べられました。基調講演2では現在WHO(世界保健機構)のリスクマネジメントに関する委員会の委員でもある国立保健医療科学院政策科学部の長谷川敏彦部長より、これまでの医療安全の概念整理とこれからの潮流、とくに医療安全の国際的動向についての講演がありました。
引き続いて事例検討1では、国立保健医療科学院政策科学部の藤澤由和氏より、「病院安全文化の測定尺度」についての講演がありました。病院安全文化測定尺度は米国の退役軍人病院ですでに使用されている約50項目の質問表です。この質問表の国内での回答結果を多変量解析したところ、13の医療安全に関連する要因が明らかになり、職種別の特徴も浮き彫りになりました。事例検討2では練馬総合病院の柳川達生副院長より、「RCA(根本原因分析)の実際について」という題で報告がありました。柳川副院長は米国ラスベガスで行われたRCA研修を受け、それを練馬総合病院で実施した経験等が語られました。事例検討3ではベルランド総合病院の医療安全管理室の楠本茂雅室長が、「医薬品エラーにおけるFMEA(エラーモード影響分析)について」と題して、FMEAの医薬品工程における影響度分析の具体例について話されました。事例検討4では日本医科大学附属病院医療安全管理部の長谷川幸子副部長より「リスクマネジメントへのクリティカルパスの応用―リスクパス―」についての報告がなされました。「リスクパス」とは転倒や誤薬、気管内チューブトラブルが発生した以降の患者観察項目、検査処置項目について標準化をはかり、クリティカルパス化を図ったもので、新しいパス概念として注目されました。
最後にNTT東日本関東病院の坂本すが看護部長より、医療マネジメント学会の中に医療安全委員会を結成し、医療安全活動の報告会の開催と医療安全対策標準化作業をすすめていく抱負が述べられました。また医療安全に関する雑誌編集の企画があることも明らかにされました。
会場風景
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