第7回医療連携セミナーが平成14年9月14日に、東京都新宿区にある国立国際医療センターで開催されました。基調講演は国立保健医療科学院政策科学部長の長谷川敏彦氏が「究極の連携―疾病管理は日本で実現可能か?」と題して、疾病管理の可能性について語られました。長谷川部長によると、疾病は次の3つの類型に分けられる、第一のグループは風邪ひき・腹痛等の軽症疾患(self limited disease)、第二グループは高血圧・糖尿病等、慢性疾患で予防的ケアを必要とするもの、第三グループはがん、心臓疾患の手術等技術集積性を要するものの3つに分けられます。このうち、疾病管理の対象疾患は後2者であるといいます。また、疾病管理の実現には、当該疾患のガイドラインや医療連携システムの構築が必要であります。そしてシステム全体としての診療の結果を追跡(モニター)する臨床指標(clinical indicator)の設定と、これらを全体として認める支払い方式が重要となると述べました。
次に事例報告としては国立長野病院より武藤が「診療報酬改定と疾病別連携の必要性について」として、2002年4月の診療報酬改定における医療連携関連項目とくに地域連携小児夜間・休日診療料の現状と課題、そして手術の施設基準と広域連携の必要性について報告しました。とくに手術の施設基準については、現状で問題点について整理しました。続いて、公立昭和病院内分泌代謝科部長の貴田岡正史氏が「糖尿病の地域診療システム」として、北多摩地区における糖尿病をテーマとした疾病連携構築を発表されました。貴田岡氏によるとこのシステムの構築により地域における糖尿病専門外来の枠数と患者数・糖尿病教室と教育入院の実績・糖尿病教育スタッフの人数のいずれも増加したといいます。また患者会の設立も円滑に行われました。院内の連携が円滑になり糖尿病チーム医療の確立が容易になったと述べられました。
つぎに、慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室講師の池田俊也氏が「糖尿病疾病管理の経済効果」と題して発表されました。糖尿病の疾病管理の経済効果について、Rubinらは、7つの保険プランの計7000名に対して疾病管理プログラムを導入した結果、初年度で1患者1月あたり$50(12.3%)の費用削減が得られたと報告しています。
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会場風景
また、わが国における糖尿病疾病管理の導入可能性と、期待される経済効果についても報告されました。
そして、国立相模原病院臨床研究センターのアレルギー性疾患研究部長の秋山一男氏は気管支喘息のガイドラインと疾病管理の必要性について述べられました。気管支喘息の診療ガイドラインは診断・治療の国際的な均一化、向上をめざし、非専門医への初期診断治療の情報とともに、非専門医と専門医の役割分担に関しての情報を提供しています。このような視点から慢性疾患として外来診療を主体とする気管支喘息診療においては、日常の自己管理とともに患者さんの生活空間に密着した地域診療システムと専門的診断・検査および救急治療のための喘息救急・専門診療システムの確立が必須であることを説かれました。
静岡市立静岡病院長の柳沼淑夫氏は静岡市でおこなっているイーツーネットの試みを紹介されました。イーツーネットは患者一人に二人の主治医(病院主治医とかかりつけ医主治医)という意味であり、糖尿病、がん、循環器疾患など疾患について病院の専門医が行うこと、開業医の行うことを精密に役割分担しておこなう疾病別連携の試みです。
セミナーの最後に厚生労働省保険局医療課企画官の矢島鉄也氏より全体の総括とコメントをいただき、盛会のうちにセミナーを終えました。
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