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2003年3月1日          医療マネジメント学会News Letter            第11号(3)
セミナー開催報告
第1回電子カルテセミナー報告
−電子カルテ導入を目指して−
NTT SI基盤研究所主幹研究員 津村 宏
 医療分野においても電子化が急速に進みつつあります。その中でも電子カルテの必要性は高く、医療マネジメント学会でもメインテーマの一つになっています。そこで「電子カルテ導入を目指して」をテーマに、2003年1月18日に第1回電子カルテセミナーがこまばエミナース(東京)で開催されましたので報告します。
厚生労働省医療情報推進室の関室長は、医療政策面から「電子カルテ普及のシナリオ」と題して講演されました。経営環境が悪化する中、医療分野においてもリエンジニアリングが重要であり、電子カルテが、医療の抜本的な見直しのツールとなる。厚生労働省としては、環境整備(標準コード体系の作成など)、規制緩和(医療情報の電子媒体での保存)、補助金・税制(電子カルテ導入費用の補助)、などの政策で電子カルテ普及のバックアップを行っている。平成14年度から保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)の研究事業として、「標準的電子カルテシステムの開発」の研究会を始めた。医療情報システムのコンポーネット化で、機能追加や異なるメーカー製品の接続が容易になる。今後を期待してほしいと発言されました。
 財団法人医療情報システム開発センターの開原理事長は、「電子カルテの医療における意義」と題して講演されました。医療の電子化は、1970年代に医療事務の省力化を目的とした医事会計システムから始まり、1980年代のオーダ入力型システムへと発展し、1990年代のIT技術、マルチメディア技術の普及で、情報システムが医療の質向上に役立ち始めた。21世紀は、インターネットの普及により、社会が情報化し、患者も情報を求めるようになった。

会場風景


医師のため、看護師のための病院システムではなく、患者が主役の病院患者情報システムでなければならない。電子カルテへの期待は、医療の効率化、医療の質的な向上、情報の開示にあるが、電子カルテを導入しただけで実現できるわけではない。電子カルテの導入は、マネジメント、組織、運用などを変更する覚悟が必要など、電子カルテを成功させるための条件を詳細に解説されました。更に、先端的な事例の紹介がありました。育成医療センターのベッドサイド端末は、医師が回診するときは電子カルテとなるが、患者はその端末でテレビを見ることも、自己の経過記録をみることもできる。また、インターネットを通じてカルテを患者自身に公開している医療機関も紹介されました。電子カルテシステムは、単に医療関係者のためのシステムではなく、患者を含めたシステムへと発展してきていると発言されました。
 富士通からは、クリティカルパスを主体にしたデモを含めて電子カルテシステムの紹介がありました。従来の基幹システムの連携した構築では種々の問題があった。富士通の最新の電子カルテシステムでは、患者情報のデータベースを一元化したことで、効率的で拡張性の高いシステムを構築できるようになった。また電子カルテシステムの研究時代から構築を経験し、最近は施設内業務と電子カルテの機能との最適な組み合わせで提案できるようになったとの説明がありました。
 NTT東日本は、電子カルテシステムを導入する際のコンサルティング業務に力を入れている。電子カルテ導入の成功の可否は、何のために電子カルテを導入するのか、院内業務をどう改善し、どのシステムや機器を組み合わせるかの検討が非常に大切である。NTT東日本では、経験のある専門家を院内各部門に派遣し、業務内容を分析し、業務の改善点を提案する。機器類は、導入の目的や業務の改善内容から、相互接続性やカスタマイズの可能性などを考慮して選択を提案する。導入後も院内システムは、進化し続けるので、継続してコンサルティングを提供可能であるとの発表がなされました。
 電子カルテ導入の成功の秘訣は、「業務分析を通じて、現状の業務スタイルにこだわらず、電子カルテシステムに合わせて業務変更を行うことが重要である。」との印象をうけました。

プ ロ グ ラ ム
○日 時 平成15年1月18日(土)10:20〜16:20
○場 所 こまばエミナース(東京都目黒区)
10:20 開 会 医療マネジメント学会理事長 宮崎久義
    挨 拶 第5回医療マネジメント学会学術総会
                   会長 山内英生
10:30〜11:00 講演1  
     「電子カルテ普及のシナリオ」
         厚生労働省医政局研究開発振興課
         医療技術情報推進室長 関 英一
11:00〜12:00 講演2
     「電子カルテの医療における意義」
        財団法人医療情報システム開発センター
                  理事長 開原成允
13:00〜14:30 演題1
    「電子カルテシステム−富士通の提案」
       富士通株式会社公共営業本部
       医療統括営業部担当部長 鈴木淳夫
14:30〜14:50 休憩
14:50〜16:20 演題2
 「電子カルテシステム構築におけるNTT東日本の提言」
       NTT東日本法人営業本部
       ビジネスインテグレーション営業部
                 担当部長 國井重男