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ご挨拶
第9回日本医療マネジメント学会学術総会 開催報告

第9回日本医療マネジメント学会学術総会
会長 落合 慈之(NTT東日本関東病院 院長)

 平成19年7月13日(金)、14日(土)の両日、東京・高輪のグランドプリンスホテル新高輪・国際館パミールにおいて第9回日本医療マネジメント学会学術総会を開催させていただきました。初の東京開催に加え、日本学術会議より6月21日に日本学術会議協力学術研究団体の指定を受けた後の最初の開催ということで、本学会にとっても、また、運営に携わらせていただいたNTT東日本関東病院スタッフ一同にとっても誇らしい記念すべき学術総会となりました。
 残念であったのは折からの台風4号の影響で2日目が悪天候となり、一部の方々が参加を見合わせられたり、また、参加者の多くも帰路に多大の不自由を強いられたことでした。事前登録:2,246名、当日登録:1,382名、合計:3,628名の参加でしたが、主催者として参加頂いた各位に心より感謝申し上げると共に、台風の影響を蒙られた皆様には改めてお見舞いを申し上げたいと思います。
 主題は「医療のより良い提供体制とより良い利用方法を求めて 〜限りある医療資源を有効利用するために〜」でした。これに対し、一般演題(口演/ポスター)584題、クリティカルパス展示115題の応募をいただきました。いずれも採用とし、テーマごとに出来る限り会場を統一して、同一テーマのシンポジウムとも併催にならないように工夫しながら、口演については初日 8会場 40セッション、2日目 7会場 33セッションとしてご発表をお願いしました。どの会場も満員で、それぞれに熱気にあふれる討論を繰り広げて頂きました。ポスターは企業展示会場に隣接して発表会場を設けましたが、非常に多くの方にお訪ね頂けました。初日夕方6時からの発表時間には、Evening session with wine と銘打って、飲み物と軽食を用意させて頂きましたが、ワイングラス片手に談論が風発、討論・親交の輪が収束したのは夜9時近くでした。
 招待講演と教育講演はそれぞれ参会者全員が一堂(一部同時中継もとりいれましたが)で聞くプレナリーセッションとしました。折角の名講演を、ご自身の発表や座長等のデューティで聞き逃す無念を避けたかったからです。
 綾戸智絵氏(招待講演1)には「世界中の医療者との出会い」と題して、ご自身のアメリカでの妊娠・出産・精神的葛藤にまつわるエピソードを、気さくな人柄そのままに、陽気にお話し頂きました。公開講座を兼ねており、一般聴衆も20名ほどいらっしゃったようです。定員1,600名のA会場は1席の空席もなく、同時中継した定員430名のB、C会場も満員の大盛況でした。「アメリカ医療の光と影」といわれますが、ホームドクターが果たすべき光の部分を改めて教えて頂きました。
 畑村洋太郎先生にお願いした教育講演「失敗学のすすめ」も期待に違わぬ名講義でした。現場に直に足を運ばれ、ご自身の目でご覧になり、ご自身の耳で聞かれた数々の事故や失敗の事例を、系統的に整理され、医療の現場に今日からでも応用可能なようにお話し頂きました。最近ではあまりにご多忙で、講演をお断りになられることが多く、今回の講演は2年前からの約束だからということでした。
 招待講演2は「人の育て方」と題して、平 辰 大庄株式会社社長にお願いしました。身一つから日本中に日本海 庄やチェーンを展開されるまでになった方の、人情、優しさ、そしてある意味での厳しさを極めてフランクに語って頂きました。誰でも窮地にあるとき、絶頂にあるときがあり、その折々の決断の仕方など、多くのエピソードをはさまれてのお話しに会場は感動に包まれました。会場全体しわぶき一つ無くとはまさにこのことでした。「医療制度改革 〜明日そしてあさっての医療を展望する〜」、「医療情報の非対称性 〜真に患者が欲しい情報とは〜」、「DPC時代の医療マネジメント」、「医療安全ラウンド」、「地域におけるクリティカルパスの活用効果と展望」と題した5つのシンポジウムに加え、特集「クリティカルパスの最前線」では、いずれも今第一線でご活躍の方々に座長およびシンポジストをお務め頂きました。6つの企画を通じて、奇しくも得られた共通の結論は「これからの日本の医療を考える上では、是非、国民に、就中、患者や患者の家族だけでなく一般の元気な人々にも、広く日本の医療について知ってもらう必要がある、そのためにはわれわれも一層の啓発のための努力をしなければいけない。」ということであったように思われます。誠に今回の主題に合致した結論であり、主催者としても大いに意を強くした次第です。
 ランチョンセミナーは15本用意できました。クリティカルパスに留まらず感染対策、リスクマネジメント、病院経営、DPC、医療評価、医療材料、病院建築、モチベーション向上など、昨今で最もホットな分野の話題を網羅したつもりです。協賛頂いた各企業に心から感謝を申し上げます。どの会場も満員で、まさに会員の向上心の発露を見た思いです。主催者の不行き届きで立ち見を余儀なくされた方々には改めてご寛容をお願いしたいと思います。
 この他、今学術総会の新機軸として主催者企画(関東病院紹介)、カルテレビュー演習、フリートークセッション2題を開催させて頂きました。特にフリートークセッションでは「医療連携室」と「7:1看護基準」という主題のタイムリーさに加えて、座長の下村裕見子氏、坂本すが氏の好司会もあって、会場は立錐の余地もない超満員となりました。いざとなると遠慮をされて発言がでないのではという主催者の事前の不安は全くの杞憂でした。今後、このような形の発表・意見交換も学会における一つの形になるのかも知れません。会場がいかにも手狭であったことについては、重ねて、主催者の不明をお詫び致します。
 今学術総会では、会員の便利を考えて、ハンズアウトサービスをとりいれてみました。おそらく我が国の学術総会では初めての試みと思われます。スライド原稿を事前に登録して頂く必要があったため、準備をお急かせすることとなりましたが、最終的に、一般口演126題、ポスター45題をはじめ、教育講演、会長講演、ランチョンセミナーなど計179題のご協力を得ました。プリントアウトコーナーは連日人にあふれ、印刷に使用された紙は計20,000枚を数えましたが、極めて整然とご利用頂けており、最初としては大成功であったと思われます。今後はクリティカルパス展示などにもこの方法が利用されるとよいかも知れません。
 2年前に会長に指名されて以来、NTT東日本関東病院のスタッフと共に準備を進めてきましたが、振り返ってみればあっという間でありました。支えてくれたスタッフ一人一人を心から誇りに思います。当日の運営に関わって頂いた全員に感謝するとともに、この2年間、ご指導、ご後援、ご協賛頂いた諸方面の各位にあらためて御礼を申し上げる次第です。不行き届きが多々あった点については会員各位のご理解を賜りたく存じます。
 学術総会は第9回を終えました。今までは内輪に向けた会でした。今後は、より多く(出来れば日本中)の種類の病院の院長、副院長、看護部長にも参加を呼びかけ、外に向かって意見・情報を発信することのできる学会に育っていく必要があるように思われます。日本医療マネジメント学会の益々の発展を祈念して、第9回日本医療マネジメント学会学術総会開催報告とさせて頂きます。