第13回日本医療マネジメント学会学術総会

ご挨拶

会長 香川 惠造

地域で守る患者中心の医療 ―チーム医療と医療連携―

第13回日本医療マネジメント学会学術総会 会長 香川 惠造
(市立福知山市民病院 院長)

 2011年6月24日(金)、25日(土)の両日、京都市勧業館みやこめっせ・京都会館において第13回日本医療マネジメント学会学術総会を開催させていただきました。

 今回の開催におきましては、演題申込み締切直後の3月11日に東日本大震災が発災し、多くの方が被災されました。当初、学会を開催しえるのかと大変危惧いたしました。しかし、このような時こそ、質の高い医療を提供するための議論の場である本学会を開催し、会員相互の研鑽に努めることが重要であると考え、開催に至った次第です。会期を通じ、参加人数は4,710名(事前登録:2,658名、当日登録:2,052名)と多くの方にお越しいただきました。御参加いただきました皆様に感謝申し上げますとともに、被災地の一日も早い復旧・復興をお祈りする次第です。
 さて京都での本学会の開催は、2度目になります。京都は、伝統・文化を守り伝えていくとともに、変革すべきものは変革するという進取の気性に富んだ町であります。この営みこそマネジメントの本質に相通ずるものがあります。その京都を舞台に、地方の自治体病院の院長が会長を務める今回の学会では、「地域で守る患者中心の医療 -チーム医療と医療連携」をメインテーマに掲げ、それに沿ったプログラムを組ませていただきました。
 御応募をいただきました演題につきましては、査読委員による審査を経て、一般演題1014題、クリティカルパス54題、合計1068題を採用させていただきました。カテゴリー別では医療安全、地域医療連携、医療の質の順に多く、今日の課題を反映したものでした。御希望に添えずポスターに回っていただいた演題もありましたが、これまでにない多数の応募をいただき、御礼申し上げます。
 1日目の招待講演は、諏訪中央病院名誉院長 鎌田實先生に「言葉で治療する―医療と信頼とあたたかさの関係」というテーマで御講演いただきました。鎌田先生は日本チェルノブイリ連帯基金を設立され世界的に御活躍されており、その豊富な経験に基づく医療者と患者さん、人と人との関わりについてのお話は、感動的で心に強く響くものでした。2日目の服飾評論家 市田ひろみ先生の御講演は、知性溢れる味わい深いお話でした。伝統を守り抜く力、絶妙な間の取り方、心遣いなど、源氏物語の時代から現代に至るまでの京の人々の知恵に満ちた暮らしの一端を拝聴することができ、感銘深いものでした。
 特別講演では、厚生労働省保険局医療課 迫井正深先生から「医療制度を取り巻く現状と課題」のタイトルで、医療制度の今後の方向性をわかりやすくお示しいただきました。また、近森病院院長 近森正幸先生の御講演「多数精鋭のスタッフによるチーム医療の実践」からは、チームで医療サービスを提供することの重要性を再認識させる内容であり、多くのヒントを得ることができました。
 教育講演では、ICT・NST・緩和ケアチームの役割と現状について、わかりやすく内容のある御講演をしていただきました。教育セミナーや12のシンポジウムを通じ、クリティカルパスをはじめ、医療安全、地域連携、医療コンフリクトマネジメント、病院物流とSPD、DPCなど多岐にわたる領域で活発な議論が展開されました。医療システムの骨格を支えるITの推進についてのシンポジウムは、ITの今日的問題から医療の未来を展望できる大変有意義なものでした。今回は、医薬・薬薬連携、医療機器の安全管理など新しい領域においてもシンポジウムを企画しましたが、大変好評でありました。また、チーム医療の困難性が指摘されている手術室や救急・災害医療、人材育成の領域においても、最新の情報発信があり、大変興味深いシンポジウム・セミナーとなりました。新しい試みとして企画したフリートークセッション「急性期から、回復期へ、そして居宅(生活の場)へ―看護がつなぐ患者さんの人生」は、病院から後方施設へのシームレスな医療連携を考える良い機会となり、今後も継続した議論が必要と感じました。
 ポスター会場・クリティカルパス展示会場にも多くの方が参加され、発表者と質問者が熱く議論を交わされている光景があちこちで見られ、主催者として大変嬉しく感じました。また、口演の一部会場では、立ち見の方が出るほど盛況でありました。いずれの演題も日頃の成果が現れた素晴らしいものでしたが、その中から学会賞(ポスター5演題、クリティカルパス2演題)を厳正な審査の下に選び、閉会式の場で表彰させていただきました。
 今回の懇親会では、時間の有効活用のため学会会場を利用し、ケータリングによる立食という初の試みを行いました。多くの方の御参加をいただき、京都らしい「はんなり」した交流の場となりました。最初の鏡開きやクインテットによる演奏で会場の雰囲気は大いに盛り上がり、和気藹々の楽しい歓談の場となりました。
 最後になりましたが、企画から運営に至るまで宮﨑理事長をはじめ多くの学会員の皆様の御指導と御協力をいただきましたことに深く感謝いたしますとともに、御参加いただいた全ての皆様に改めて御礼申し上げます。また、学会運営に全力で役割を果たしてくれた当院職員ならびに看護学生のスタッフにも感謝している次第です。
 日本医療マネジメント学会の益々の御発展と皆様の御活躍を祈念いたしまして、第13回日本医療マネジメント学会学術総会の開催報告とさせていただきます。

 来年は、佐世保で皆様方とお会いしましょう。本当にありがとうございました。