|
開催報告 第10回日本医療マネジメント学会学術総会
第10回日本医療マネジメント学会学術総会
会長 稲垣 春夫(トヨタ記念病院 病院長) |
|
平成20年6月20日(金)、21日(土)の両日、名古屋国際会議場において第10回日本医療マネジメント学会学術総会を開催させていただきました。お陰を持ちまして、参加総数は3,950名(事前登録者:2,491名、当日登録者:1,459名)と盛会裡に無事終了することができました。これもひとえに皆様方の格別なご指導とご支援の賜物と心より感謝申し上げます。
今回、テーマを「安全・安心・信頼の医療 〜未来につづく地域医療連携〜」とし、本来であれば、「安全・安心・信頼」という医療が必ず備えていなければならない要素をあえてメインテーマに取り上げることで、本質を見失わず、それぞれの立場で質の向上を目指していくとともに、昨今指摘されている「医療崩壊」にも深く切り込んだ内容を取り揃えました。また、締め切り期限を延長して募集して参りました。皆さまのご協力により、一般演題625(口演:506題、ポスター:119題)、クリティカルパス展示77題の計702題の応募をいただくことができました。特に口演希望の方については、全員に発表する機会を与えるためポスター発表への振り替えは行わず、会場を増やすなどして全て対応させていただきました。どの会場も満員のなか活発な討論が繰り広げられ、かつ予定通り終了出来ましたことを座長の先生方はじめ会員の皆様に感謝申し上げます。 |
特別講演として厚生労働省医政局の中村博治企画官をお呼びして、「これからの医療制度のあり方」をテーマに1.医療従事者の数と役割、2.地域で支える医療の推進、3.医療従事者と患者・家族の協働の推進─の3本柱について詳説いただき、今後の医療制度の方向性を再認識することが出来ました。
また、招待講演では、3人の演者をお招きしました。1日目は金城学院大学学長の柏木哲夫先生に「ホスピスケアとユーモア」というテーマでご講演いただきました。柏木先生は淀川キリスト教病院にホスピスを設立された日本のホスピスの草分け的存在であり、その経験を踏まえて終末期における笑いの効用を分かりやすくお話しいただきました。また、医療にちなんだ斬新かつ的を得た川柳をご披露いただくなどユーモラスな講演で満員の会場も笑いに包まれていました。
2日目は、(株)トヨタ自動車の林南八技監による「業種を問わず展開できる”TOYOTA WAY”『トヨタ生産方式の本質と進化(深化)』〜今、何が求められているか〜」と題し、効率を重視しながらも質の高めるというトヨタ自動車独自の生産方式の歩みから、ものづくり・人づくりに至るまで幅広くお話しいただきました。それぞれの医療現場で今後、取り組むべき改善の良いヒントになったと思います。もうひとつは、市民公開を兼ねた(株)トヨタ自動車パートナーロボット部の高木宗谷理事による「将来の介護・医療を考えたパートナーロボットの開発」と題した講演で、介護・医療支援などロボットが関わる医療の未来をイメージしていただけたと思います。今や家庭に1台以上の乗用車が当たり前ですが、これからは家庭にロボットが当たり前の時代もそう遠くないかもしれません。また、講演に合わせて会期中、2輪倒立型の「モビロ」とトランペット演奏ロボットのデモンストレーションを行いました。この「モビロ」は左右独立に車輪が上下し、凸凹路面や斜面でもシートを水平に保ったまま安定走行が可能な上、病室の狭い場所でも人の呼び出しに応じたり、人に追従できる機能などを備えており、少しでも身近に感じてもらえるよう急遽、パートナーロボット部の協力で実演が可能となりました。実演会場が狭く、立ち見やご覧いただけなかった方も多くご迷惑をおかけすることになり大変申し訳ありませんでした。 |
シンポジウムでは、クリティカルパスを中心に地域連携をテーマとした「地域医療連携クリティカルパスの現状と課題」、「医療崩壊防止のための地域連携ネットワーク」、「がん治療連携」の3つをテーマとして今年4月の診療報酬改定に絡めて取り上げました。また、パネルディスカッションでは「未来につづく地域医療連携」、「電子カルテはずっと使えるの?買い換えないといけないの?」とした問題提起のなかから、これからのあるべき方向性を示唆する試みをいたしました。
昨年からはじまった参加型フリートークセッションでは「連携のための言葉」を取り上げ、それぞれ異なる切り口から活発な議論をしていただきました。ほかにも「マネジメント人材育成と医療の質」、「DPCと医療マネジメント」、「疾病管理と医療費適正化」など医療崩壊を食い止める施策に焦点を当てたテーマについて第一線でご活躍の先生方からそれぞれの対場で発言していただきました。なかでも、「これからの医療安全」は、日本航空客室サービス企画部の中村真典副部長をシンポジストに迎え、医療業界の外に目を向けたシンポジウムを行っていただきました。異業種から学ぶべき点も多く、幅を持たせた新しい学術総会の形として今後も増えていくことを期待します。
懇親会では事務局の予想を越え、320名のご参加をいただき有意義な交流の場となりました。ファインセラミック(陶磁器)による楽器演奏は、木材に変わる新たな音楽文化として今話題のエコにちなんだ企画としました。多くの皆さまにご参加いただきありがとうございました。
Webによるハンズアウトも400題のご登録をいただき、4万件を超えるアクセスがありました。今後も運用等を見直しながら参加者へのサービスに繋がればと思います。
名古屋国際会議場はご承知の通り、周辺に飲食店がほとんど無いことから、ランチョンセミナーを大きな会場を中心に選定し、2日間で15会場ご用意いたしました。しかしながら、会場内での喫茶店で長蛇の列ができるなど大変ご不便をおかけしたことに対し、深くお詫びいたします。
最後になりますが、企画準備から運営にあたり宮崎理事長をはじめ理事・役員の先生方や学会本部の皆様のあたたかいご指導とご協力に深く感謝いたしますとともに、会員、参加者の皆さまに支えられて学術総会も盛会裡に終了することができました。改めて心よりお礼申し上げます。そして、各会場で協力しながら責任もって役割を果たしてくれた病院職員と看護学生のスタッフにも感謝しています。
日本医療マネジメント学会の益々の発展と各地域で築き上げられた技術や仕組みを学術総会という場から日本全国へと伝承されていくことを今後も祈念しております。 |