会長挨拶

第18回⽇本医療マネジメント学会学術総会 会長
田中 二郎
株式会社麻生 飯塚病院 名誉院長

この度、第18回日本医療マネジメント学会学術総会を開催させていただくこととなりました。福岡市での開催は第7回学術総会以来11年振りとなります。全国からお集まりになる学会会員の皆様のご期待に背くことのないよう、職員一同気持ちを合わせ、鋭意準備に邁進しています。

人類とチンパンジーとの現今の差は500万年の改善とイノベーションの積み重ねの差であると言えます。ことほどさように、人類にとって改善とイノベーションは社会の発展を促進する重要な因子であり、集団や組織が向上していくためにこの両者は常に活性化していかねばなりません。

いま、グローバルな動きとして、多職種横断的なチーム医療の現場でクリティカルパス、TQM、トヨタ生産方式などのツールを用いて、ムリ・ムダ・ムラの排除など業務改善と経営効率の向上が日々積み重ねられるようになってきました。これらのツールは医療界にとって業務の見方、捉え方を一変させるイノベーションそのものです。また、電子カルテを筆頭とするICTの進歩も医療・福祉分野の現場サービスと経営の品質を大きく高めています。実は、サービスを高めていくとコストが上がり、経営の足を引っ張るというのが常識ですが、一世を風靡するイノベーションには「あれかこれか」の二律背反を覆し、「あれもこれも」と、万人に受け入れられる性質のものが多くあります。

今、日本の国家財政が切迫する中、医療費高騰に対して早急な手当てが必要であることは論を待ちません。ただ、やり方として、今までの「あれもこれも」の高福祉時代から、「あれかこれか」の切り捨て時代にならないようにしなければなりません。必要なのは、皆が危機感を共有し、知恵を絞って改善に加えてイノベーションを起こし、「あれもこれも」の明日の最適医療を切り拓く気概ではないでしょうか。「売り手良し、買い手良し、世間良し」と近江商人心得にあるように、病める者、癒す者、そして納税者としての国民、みな満足する最適医療です。

第18回日本医療マネジメント学会学術総会では、「明るい病院改革~改善とイノベーションで切り拓く明日の最適医療~」をテーマとしました。学会活動の柱であるクリティカルパス、医療安全、医療連携、職員教育などに加えて、将来社会に向けて現在の医療をどう改善し、改革していくかについての討議を期待します。日本の明るい将来にもつながる学術総会となるよう、職員一同努めて参りますので、全国の学会会員の皆様のご参加を心よりお願い申し上げます。