流量制御方式の輸液ポンプにおける輸液セット装着手技が
流量誤差におよぼす影響


宮川浩一、大澤純子、根井さき子

名古屋市厚生院 リスクマネジメント部会

【要旨】
 輸液ポンプの流量に起因するインシデント報告が相次いだ。当院で使用している輸液ポンプはペリスタルティック(蠕動)方式により流量を制御しているが、同方式の特徴はチューブの太さにより注入量が決まることである。輸液量に関するインシデントのほとんどが予定輸液量を満たさないことに起因していた。そこで過少輸液の主な原因は輸液セットのチューブ伸展による内腔狭小化にあると考え、実態について調査するとともに輸液セットを装着する際の張力と輸液量の関係について検討した。輸液ポンプを用いて24時間持続静脈内注射を行っている入院患者を対象に輸液残量率を計測したところ、すべての症例において過少輸液が明らかとなった(12.2±3.2%、n=14)。輸液量とチューブにかかる伸展張力の関係を調べるために用手的伸展と錘を用いた定量的伸展による検討を行った。看護師5名が輸液セットの装着に際してチューブに軽い伸展および強い伸展を加えたところ、伸展なしと比較して有意な輸液量の減少を認めた。定量的評価では、錘の重量と総輸液量とは反比例した。以上の結果から、輸液セットの装着時にチューブに伸展を加えないよう院内に周知徹底した。輸液残量率を再調査したところ有意な減少を認めた(8.1±2.4%、p<0.01、n=16)。輸液ポンプ使用時に正確な流量を確保するためにはチューブに伸展を加えないような慎重な操作が必要である。