大腿骨頚部骨折クリティカルパス−適用・非適用患者の比較−

近藤暁子1) 菅田勝也2) 五十川弥生3)
坂本すが4) 貝瀬友子4) 西林和美5)

1) ワシントン大学看護学部
2) 東京大学大学院医学系研究科 看護管理学分野
3) 社会福祉法人十善会病院
4) NTT東日本関東病院
5) 国保橋本市民病院

【要旨】
 大腿骨頚部骨折は高齢者に多く,高齢者は若年者に比べ,骨粗鬆症を含む複数の全身性の併存症を持っている可能性が高く,身体的機能が低下している場合が多い.大腿骨頚部骨折のクリティカルパスについては,その導入前後の術後入院期間やリハビリテーションの段階を比較した研究は多く見られるが,どの患者をクリティカルパス適用とし,どの患者を非適用とするかという明確な判断基準はなく,病院,主治医の方針によりさまざまであり,またこのような適用基準についての研究はほとんどされていない.そこで,クリティカルパス適用・非適用の基準を考える上での参考とするため,大腿骨頚部骨折のクリティカルパスを導入している3つの病院を対象に,クリティカルパスの適用・非適用に対する判断基準とその割合,適用後の中止・中断理由,アウトカム達成率について調査を行った.
 クリティカルパス適用・非適用と有意な関連がある併存症はなかったが,非適用理由には痴呆が最も多かった.中止・中断理由には主に老人性痴呆,せん妄が関係していた.痴呆のある患者にクリティカルパスを適用しても途中で中止中断する可能性が高く,アウトカム達成は難しいため,クリティカルパスの非適用基準のひとつとして痴呆は妥当であると言える.しかし,単に非適用とするだけではなく,特別なクリティカルパスを作成するなどの工夫も必要であろう.