看護師間の知識共有による医療事故防止策の検討

大重育美

佐世保共済病院

【要旨】
 医療過誤の原因は、情報伝達の不備、知識・技術の未熟性、業務行為の中断、時間切迫などと推測される。今回は、その中でも医療サービスの直接提供者である看護部門に焦点を当て、医療過誤防止対策について情報と知識の側面から分析した。診療行為の過程で恵者を診た医師・看護師らの非数値的な雰囲気を含むイメージ情報が重要になるケースが多い。その判断が的確でかつ迅速であるほど、この医療情報は価値が高いものといえる。ここでのイメージ情報は、単なる情報でなく、価値をもつ情報ヘシフトされて知識となる。知識は、勘や洞察、思い、ノウハウ、技能などで、言葉や数字で論理的に表現することが困難な暗黙知と言葉や数字で明示できる形式知とに大別できる。
 看護師が臨床から得る臨床知の蓄積にも注目し、看護師個人が体験して感じたこと、ヒヤリ・ハットしたことなどを入力しておき、その情報をカテゴリー別・コンテンツ別に整理して蓄積してデータベース化する。そこで、他の看護師が様々な状況に直面した時に活用できるシステム構築しておく。データベース化という工程は、看護師の高い認識が必要であり、臨床知をグループ知識として取りこみ、組織知識(組織知)として病院組織に蓄積しようとする姿勢が必要である。したがって、臨床知を根拠に基づけて対処する習慣を看護体制に取り入れることができた病院は更なる進化が可能と予測する。
 そこで、今回、IT時代の医療体制の変革を視野に入れ、医療過誤防止における看護支援策をSWOT分析や知識移転の観点から、看護師もナレッジワーカーであるという認識をもち、知識の価値評価体系を構築するという方向性を見出し、今後の示唆を得たのでここに報告する。