<原 著>
電子カルテの指示読み取りシミュレーションにおける看護師の臨床判断プロセスの可視化
城戸眞由子1)2) 岡 耕平1)
1)学校法人大阪滋慶学園 滋慶医療科学大学大学院
2)宗教法人在日本南プレスビテリアンミッション 淀川キリスト教病院
【要旨】
看護師の電子カルテ指示読み取り時の誤った臨床判断は事故に繋がる。先行研究で臨床判断プロセスは示されているが、その思考内容は明らかではない。本研究は、思考発話法とテキストマイニング法で看護師の臨床判断の思考の構造と特徴を明らかにすることを目的とした。指示読み取り経験のある看護師17名(10年以上10名、4-9年4名、3年以下3名)が参加した。内科・外科の仮想事例30件中、不備指示4件を設定し、Web会議ツールで仮想指示を提示・録画し、思考発話法でタスク中の思考を発話してもらった。参加者が指示の不備に気づいた思考を正答、気づかなかったものを誤答とし、発話内容を比較した。看護師経験年数で正答率の差異は説明できなかった。テキストマイニングの結果、正答者は情報に基づく推論語が多く、誤答者は行為そのものの表現が多かった。提示された初期情報への疑義が正誤を分けた。対応分析と階層クラスター分析により、臨床判断時の思考の構造と特徴を抽出した。結果をTannerの臨床判断モデルに当てはめて解釈すると、「気づき」「解釈」という認知プロセスを経ることが適切な判断に必要であることがわかり、情報分析スキルが必要と確認できた。