<事例報告>
インシデント出現数と業務影響度の統計学的検証から
転倒転落アセスメント項目集約に成功した事例報告
遠山義彦1) 福元大介2) 若林真紀子1)
西村千秋3) 松本純夫1)
1)独立行政法人 国立病院機構 東京医療センター
2)独立行政法人 国立病院機構 相模原病院
3)日本IBM株式会社 IBMコンサルティング事業 コンサルタント
【要旨】
医療機関は、医療安全の十分な確保と共に医療従事者の業務負担軽減を求められている。業務が多岐にわたるため負担が増えているとされる看護師の負担軽減を考える取り組みとして、入院患者に対して運用されている「転倒転落アセスメント」の項目見直しを行うこととした。当院独自に作成されたアセスメント項目は、9個のカテゴリ、32項目から構成されているが、転倒転落との関係性を明確にしたものではなかった。
2014年11月から2017年10月までに入院した36,650名の患者を対象に、アセスメント項目の妥当性を測るため同期間内に提出された転倒転落のインシデントレポートとアセスメント結果の評価を行い、転倒転落との関係性を探った。さらに深堀解析として多変量解析等を行い、転倒転落と関連が特に強いアセスメント 11 項目を抽出した。加えて病棟看護師のヒアリングを行い分析の結果「抗がん剤の使用」を項目に追加し、計12 項目まで絞り込むことが可能となった。そして業務影響度を独自に定義し、1項目1点評価から転倒転落の関連性の強い項目ほど評価に重みづけを行い、また項目の組み合わせにより危険度Vと定義できることも可能となった。
過去の報告にみられない大量データ解析により必要なアセスメント項目を絞り込むことができたことで、転倒転落発生率は低下し、看護師の業務負担軽減に結び付けた。