<事例報告>
中小病院の人材管理 〜循環器専門病院の事例から考える人が育たない組織の原因と対策の検討〜

橋本悟1)2) 真野俊樹3)

1)株式会社テクロス 病院経営管理部
2)中央大学ビジネススクール 戦略経営研究科ビジネス科学専攻博士後期課程
3)中央大学ビジネススクール 戦略経営研究科

【要旨】
 心臓病、特に虚血性心疾患は、がん、脳梗塞と並ぶ日本人の三大死因の一つである。1980年代以降、虚血性心疾患に対する治療法の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は目覚しい進歩を遂げ、本邦においても虚血性心疾患の治療に特化した循環器専門病院が誕生した。本研究では、1990年代後半に設立された循環器専門病院を例に挙げ、停滞期にある中小病院の人材マネジメントについて検討した。PubMedを用いて2022年10月までに出版された文献より「PCI/PTCA」「Japan」「reimbursement」をキーワードに検索を行った(抽出文献11件)。合計24件の文献が抽出された。うち、PubMed検索にて11件中9件が償還価格に関する日米間の比較、及び本研究には無関係であり、同様に検索エンジンより抽出した13件中11件が主観的な意見や研究の趣旨とは異なる文献とみなし除外した。2000年から2010年にかけてピークを迎えた循環器専門病院には、全国から若い医師が集まり、地域の患者を救うという使命の下に一丸となった。しかし、外部環境の変化によりその役割が変化し、変化を拒んだ医療従事者らが離職するケースが増え、新たな環境の下に求められる経営再建が必要となった。人が定着する組織を構築し、長きに渡って支持される病院へと変わるには、トップマネジメントが、創業期の家族経営から「病院経営」へと舵を切る必要が示唆された。