<事例報告>
緩和ケア病棟におけるチェックボードを用いた転倒転落防止対策―

茂木美香 石原裕起

足利赤十字病院 緩和ケア病棟

【要旨】
 緩和ケア病棟における転倒転落を防止するために、転倒転落チェックボード(以下、ボード)を作って患者情報を可視化・共有化し、この運用と成績について検討した。
 2011年7月〜2012年3月(2011年度)に発生した転倒転落事例報告と看護師意識調査の分析を行い、転倒転落防止対策としてボードを作り、全入院患者の援助行動レベル(自立度)、排泄方法、注射・チューブ類、ベッド柵・位置等の情報を一覧表示した。ボード内容は毎日見直し、スタッフ全員で共有した。ボード運用開始前の2011年度と開始後の2012年度(2012年4月〜2013年3月)の転倒転落発生率、状況、要因を比較し、また開始後の看護師意識調査を行った。
 転倒転落件数・発生率は、2011年度の22件、7.5件/千人・日に対して2012年度は13件、2.7件/千人・日と有意に減少した(p<0.01)。排泄行動時の転倒転落は2011年度の14件から2012年度は8件に減少し、発生率は有意に改善した(p<0.05)。ボード開始後の意識調査では、毎日の患者状態の変化を確認するようになった、患者の行動パターンを予測して援助や環境整備をするようになった、受け持ち患者以外の患者にも配慮するようになった等の改善を認めた。
 緩和ケア病棟において転倒転落チェックボードで全患者情報を共有し、毎日の見直しと確認を行った結果、転倒転落の防止に有用であった。