<原著>
患者ハラスメントの実態調査とその対策に関する研究
兼児敏浩 石橋美紀 日比美由紀
三重大学医学部附属病院 安全管理部
【要旨】
患者ハラスメントを「医療提供者に対する患者や患者家族による不当な要求や暴言、暴力(セクシャルハラスメントも含む)」と定義し、全国16の医療施設に協力を求め、実態調査を行った。116事例について把握できたが、想定よりも事例数が少なかった原因は患者ハラスメントに対する認識不足や収集システムの不備にあると推測された。患者ハラスメントはすべての部署・時間帯に発生しており、40代の男性が加害者となることが多かった。患者ハラスメントはまったくの言いがかりである場合は半分以下で患者の病状や些細な医療上のミスが誘引となる事例などが多く、半分以上が医療特有の原因に起因していると考えられた。被害者は女性看護師をはじめとして多くの職種に渡り、恐怖心や不快感のみならず厭世的な気分になることも多く、早急な対策が必要であると考えられた。