<紹介>
高齢者のボディイメージと評価方法の検討

三輪昌子1) 秦 温信2)

1)札幌社会保険総合病院 リハビリテーション部
2)同上 外科

【要旨】
 高齢者の転倒予防への取り組みは各分野で行われており、理学療法士の転倒予防への関わりが求められている。転倒の危険因子には筋力低下やバランス障害が多く取り上げられている。近年、高齢者では加齢に伴いボディイメージの相違が生じると報告されている。そこで高齢者のボディイメージを検討するために、高齢者と20−30歳台の若年者を対象に実験を試みた。対象者は2枚の板の間を触れることなく通り抜けられる幅を予測する(予測値)。次に実際に通り抜けられる幅を測定する(実測値)。そして、対象毎に予測値と実測値の差を求め、比較検討した。結果、高齢者では若年者に比べて有意にその差が大きかった。予測値は対象者のボディイメージを示し、実測値は対象者の現実の身体を示すと考えられた。つまり、高齢者では加齢の影響によるボディイメージの障害が示唆された。高齢者の身体には加齢による変化が生じているが、その変化した身体の明確なボディイメージを形成できていないため、現実の身体との間に相違を生じていると考えられた。このことは、自分と物との距離感を正確に把握できないために起こる椅子からの転倒等に結びつくと考えられた。ボディイメージの評価方法は従来、動作分析が中心である。本方法を用いることで簡易に検査が可能であり、対象者にボディイメージの相違を伝えることで転倒予防に役立つと考えられた。