胃全摘術用クリティカルパスにおける
予防的抗菌薬1日投与法の検討
−フロモキセフ(FMOX)とセファゾリン(CEZ)の比較−


吉野真樹1)  梨本 篤2)

1)新潟県立がんセンター新潟病院 薬剤部
2)同外科

【要旨】
 当院では、予防的抗菌薬としてフロモキセフ(FMOX)を手術日と術後3日投与としたものから、術日のみに短縮し、さらに薬剤をセファゾリン(CEZ)に変更した胃全摘術のクリティカルパスを使用してきた。今回、予防的抗菌薬を1日投与するFMOXとCEZのクリティカルパスについて、術後感染予防効果ならびに経済性を比較し、改訂の妥当性を検討した。胃全摘術を受けた103例を対象とし、FMOX投与59例(A群)とCEZ投与44例(B群)について、術後の諸臨床事項を比較した。両群用量1gを手術直前と術後に2回点滴投与した。背景因子ではB群で男性が有意に多かったが、年齢、進行度、周術期治療内容、既往症、術後在院日数において差はなかった。術後合併症はA群37.3%、B群40.9%と差はなかった。また膵炎、感染症に限っても発症率に差はなかった。術後3日間の発熱推移は両群とも非常に類似していた。術後4日目以降の発熱症例(38.0℃以上)の発症率はA群49.2%、B群38.6%であり差はなかった。抗菌薬の術後追加・再投与率に差はなかった。両群間の臨床検査値(WBC、CRP)推移に差はなかった。B群ではA群と比べて総入院費用の減少を認めた。以上の結果、予防的抗菌薬を手術日のみのCEZ1日投与とした胃全摘術用クリティカルパスは妥当であり、臨床的に継続使用が可能と考えられた。