手術における患者・部位誤認防止システム―「5ステップ法」の適用―
石川雅彦1) 長谷川敏彦1) 長谷川友紀2)
1)国立保健医療科学院 政策科学部
2)東邦大学医学部社会医学講座 医療政策・経営科学分野
【要旨】
手術における患者取り違え、部位誤認、手術方法誤認は、発生頻度は稀であるが、発生した場合に患者に多大な障害を与える重大な事象である。
今回、米国退役軍人省が開発して関連病院に周知徹底している5ステップの患者・部位誤認防止システムの有用性に関して検討した。この方法とは、まず手術の前には、インフォームド・コンセントの書類の確認、つまり、患者の氏名、手術部位、および手術施行理由などの記載確認(ステップ1)と、手術部位へのマーキング(ステップ2)が必要である。次に、手術室入室直前に、患者の氏名、生年月日、マーキング部位を手術スタッフが患者と会話することで確認する(ステップ3)。そして、執刀直前には、“タイム・アウト”と称して、手術チーム内で手術すべき正しい患者か、マーキング部位や手術方法、移植臓器の確認(移植手術の場合)などをする(ステップ4)。そして、最後に2名以上の手術スタッフで画像データを確認し、正しい患者のものか、患者データのラベルは適切か、などを確認した(ステップ5)後に執刀となる。この方法は、簡便でしかも費用がかからず実行可能にて、患者・部位誤認などの発生減少には、適切な方法と考える。