クリティカルパスの目指すもの
一アウトカムマネジメントによる医療の質向上一


野村一俊

国立熊本病院整形外科

【要旨】
 クリティカルパスは、元来、工業界において、製晶製造過程の効率化と晶質管理を目的として用いられていたもので、DRG/PPSの導入を期に米国で医療界に取り入れられた。
 製造過程の効率化と晶質管理は、言い換えれば、プロセス・成果の管理、すなわち、アウトカムマネジメントである。医療に求められる成果(アウトカム)は臨床結果が良いこと、患者満足度が高いこと、早く回復すること、医療者満足度が高いこと、安全であることである。そしてそれが効率よく行われること(コストが低いこと、収支がよいこと、治療期間が短いこと)である。入院医療に当てはめると、これらは4つのアウトカム(臨床アウトカム、顧客満足、在院日数、財務アウトカム)にまとめられる。そして、これらは入院医療の質を決定する因子でもある。
 クリティカルパスの活用は、これらの4つのアウトカム全ての向上を目指したものであり、医療の質向上が、その目的と言うことができる。
 クリティカルパス作成に当たっては、先ず、退院時アウトカム(退院基準、在院日数)の設定が必要である。この退院時アウトカム達成に向けてプロセスアウトカムが設定され、それぞれの検査・治療・看護などの内容が決定されるとクリティカルパスの表が完成する。クリティカルパスは医療者用と患者用がセットで作成される。
 クリティカルパスは見直しが重要である。一定症例に用いた後、予定からの逸脱(バリアンス)の検討、ケアー項目のEBM的検討を行い、必要があれば、退院時アウトカムをはじめ内容の見直しが行われる。これらの作業が、医師をはじめ関連する職種の医療者が参加し、繰り返し行われることにより、4っのアウトカムの改善効果がもたらされることになる。クリティカルパスは急性期医療のみでなく、慢性期医療や医療連携にも活用可能であり、わが国の医療の質向上のために、必要不可欠のものとなってきている。