<事例報告>
当院における診療録の質改善への取り組み
―全医師を対象とした定期的な診療録監査の効果―
相田真由香1) 小川哲也1) 広井知歳2) 柿ア 暁3) 小川哲史4)
1)国立病院機構高崎総合医療センター 診療情報管理室
2)国立病院機構高崎総合医療センター 心臓血管内科
3)国立病院機構高崎総合医療センター 臨床研究部
4)国立病院機構高崎総合医療センター 外科
【要旨】
診療録は、チーム医療における情報共有や医療の質・安全の向上、臨床研究と教育・研修などに必要であり、記載は法律上の義務で保険請求の根拠となる。さらには開示請求の対象となる公的文書としても、日常診療における医師の記載は大変重要であるが、適切に記載されていないこともある。そこで診療録を定期的に監査し、適切な記載法を周知した当院での取り組みを報告する。
診療録監査は、2018年度前期より入院患者を受け持つ全医師を対象に1症例を抽出し、日々の記録、インフォームド・コンセント、手術に関する項目等の11項目を0〜4点の5段階で点数化し、診療情報管理士2名と監査医師2名で評価した。監査実施後は、対象医師と各診療科長へ結果をフィードバックし、医局会や病歴管理・運用委員会で全体の結果を公表した。前期が平均点以下であった診療科では後期にも実施した。集計を開始した2019〜2022年度の4年間における全診療科の得点率(合計点/満点×100)の平均は、2019年度68.3%から2022年度83.4%へ有意に改善した(P<0.01)。具体的な評価項目を明確化し、フィードバックすることにより得点率は改善し、医師の記録に対する意識付けが進んだことが示唆された。定期的な診療録監査は、診療録の質改善に有用な方法であり、継続することが重要であると考えられた。