<事例報告>
心理的安全性確保に向けた取り組みの効果と評価方法の検証
笠松奈津子 樫村暢一
医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院 医療安全管理室
【要旨】
心理的安全性の確保に向けた取り組みを示し、取り組み前後のコミュニケーションエラーによるインシデント・アクシデント(以下、IA)レポートの変化に着目し、その効果を検証した。取り組み前後のコミュニケーションエラーによる IA報告件数を半期毎に比較検討した。また、患者影響レベル、心理的安全性の確保状況を検討した。調査期間における半期毎の全IAレポートの中で、コミュニケーションエラーによるIAは、取り組み前(2020年度下期)62件(7.3%)から取り組み後2021年度下期51件(5.7%)に減少した。また、2022年度上期は23件(2.5%)で、取り組み前および2021年度下期に比べて有意に減少した(P<0.01)。各年度における患者影響レベルの差は認められなかった。コミュニケーションエラーによるIAの中で心理的安全性が確保されていない事例は、取り組み前29件(46.8%)から取り組み後2021年度下期16件(31.3%)に減少した。また、2022年度上期は4件(17.4%)で取り組み前と比較すると有意に減少した(P=0.014)。コミュニケーションエラーによるIAレポートの検証は、心理的安全性の確保を評価する一つの指標になり得ると考えられた。