<事例報告>
矯正施設における終末期意思決定の問題点
西村涼子 新妻宏文
宮城刑務所医務部診療所
【要旨】
矯正施設で行われている医療(以下矯正医療)では、昨今、被収容者が脳血管疾患などで倒れ、意思確認が困難なケースが増加してきている。この場合、家族に今後の治療方針について確認するが、被収容者は家族との関係が破綻している場合が多いため、それが本人にとって最善かという疑問が生じる。また、矯正医療に適用される法律では本人の意思に関係なく強制的に治療・処置が必要と解釈でき、それも本人にとって最善ではない可能性がある。医療者は代理意思決定者にはなれず、被収容者の戒護をしている刑務官は職務で彼らと接しているため、やはり適格とは言えない。本人の最善を考えた終末期の治療方針を決定するためには、倫理委員会を実施する制度を整えるか、アドバンスディレクティブを導入することが適切であると考えられた。