<原 著>
ナースコールに対する「待つ患者」と「待たせる看護師」の待機時間認識調査−時間を表す言葉の時間認識−
野々村ゆかり1) 岡 耕平2) 山中 真3)
1)さいたま市立病院
2)滋慶医療科学大学大学院
3)愛知医科大学
【要旨】
現在、日本では高齢者の入院が多く、入院における医療事故の約半数に高齢者が関連し、転倒転落事故が最も多く報告されている。この事故発生率は、看護の質評価指標の一つであり、発生し得る要因を減らすことが課題である。転倒転落の背景として、患者側からはコールをしても直ぐに来ない看護側の問題が挙げられている。そこには「待つ」患者側と「待たせる」看護師側の待機時間の捉え方に相違があることが推測される。そこで、患者と看護師との待機時間の認識の差異を調査した。A県3施設に勤務する看護師287名と患者100名に無記名による調査票を郵送し、看護師207名患者97名より有効な回答を得た。結果、待機時間の捉え方には個人差が大きく見られ、さらに患者と看護師のグループ間にも違いが見られた。そして、看護師は看護場面や患者状況によって待機時間が変化していること、患者は高齢になるほど待機時間を短く捉える傾向がみられた。今後、更に高齢化が進む中、看護の質向上の一つの手段として、看護師は待機させる時間を認識し、待機時間を明確に伝える方法を見出すことが必要である。