日本医療マネジメント学会雑誌Vol22 No3 原著

＜原　　著＞
医療安全管理者が抱える業務遂行上の困難
―フォーカス・グループ・インタビューの分析から―

堀込由紀¹⁾　佐々木美奈子²⁾　中山純果²⁾　末永由理²⁾　本谷園子³⁾
駒崎俊剛²⁾　菅野雄介⁴⁾　山元友子⁵⁾　坂本すが²⁾　宮﨑久義⁶⁾

1)群馬パース大学
2)東京医療保健大学
3)東京医療保健大学大学院
4)横浜市立大学
5)NTT東日本関東病院
6)日本医療マネジメント学会

【要旨】
　医療機関で活動する医療安全管理者の業務遂行上の困難を明らかにするという目的において機縁法により選定した首都圏の病院に勤務する医療安全管理者19名に対して、インタビューガイドに基づきフォーカス・グループ・インタビューを実施し、質的帰納的に分析した。
　その結果、医療安全管理者が業務において困難と感じていることとして、【不明確な医療安全管理者育成・管理方針】、【組織的な位置づけと実際の役割や権限の乖離】、【不明確な業務範囲による業務過多】、【医療事故の対応体制の未整備】、【医療安全活動に取り組み切れない不全感】、【研修の時間確保・参加率向上の困難】、【組織全体の医療安全文化醸成の困難】の7つのカテゴリーが生成された。
　医療制度や社会のニーズの変化に伴い医療安全管理業務の複雑さが増し、医療安全管理者の協働者も多様化しているため、医療安全管理者へのより一層の組織的支援及び養成研修を現場のニーズに対応し充実させることが望ましい。