<事例報告>
シングルチェック導入前後の調査から見た注射薬調製時のシングルチェックに対する看護師の態度
飯田 恵1) 辻本朋美2) 山上優紀2)3) 大村優華2) 廣田 大2)
柴田佳純2)4) 松村由美5) 福村宏美1) 山本 崇5) 井上智子2)
1)京都大学医学部附属病院 看護部
2)大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻
3)奈良県立医科大学疫学予防医学講座
4)大阪医科薬科大学看護学部看護学科
5)京都大学医学部附属病院 医療安全管理部
【要旨】
日本の多くの医療施設では注射薬調製時、ダブルチェックを行い指示と薬剤を照合しているが、海外では近年、ダブルチェックの意義について見直しがなされ、ダブルチェックの対象を限定する動きがある。我々は、業務の一環として、特定機能病院の内科2病棟で特定のハイリスク薬以外の注射薬調製時の確認方法をダブルチェックからシングルチェックに変更した。この業務変更の前後における看護師の態度の変化を分析することが本研究の目的である。対象病棟看護師60名に対しシングルチェック導入前と導入後4週目に質問紙を用いて、注射薬調製時のダブルチェックとシングルチェックへの看護師の態度を5件法で尋ねた。
有効回答は導入前56名、導入後55名であった。シングルチェックに対する肯定的評価は、導入前に比べ導入後に増加した。また導入後調査では、ダブルチェックはシングルチェックに比べ【安全性】【連携】【総合的有効性】の項目で有意に高評価であった。一方、シングルチェックは【効率性】【適時性】【専門職としての責任】【知識向上】の項目で有意に高評価であった。
注射薬調製時のシングルチェックは専門職としての責任感を高め、個人の薬剤の知識の向上に寄与し、自律した看護師の育成につながることが示唆されたが、安全性に対する不安についての教育的課題は残った。各施設の注射薬管理の実情に合わせて注射薬調製時の確認方法を検討することが重要である。