<事例報告>
高度急性期病院におけるパワーハラスメント防止に向けた組織的アンガーマネジメント導入の試み
大浦裕之1) 乱場定吉2) 高橋明美3) 菊池貴彦1) 高橋弘明1)
相馬 淳1) 河野 聡2) 望月 泉4) 宮田 剛1)
岩手県立中央病院 1)診療部 2)事務局 3)看護部 4)八幡平市立病院
【要旨】
医療現場でのパワハラは被害者の精神的ストレスや心理的安全性の低下を誘発し、コミュニケーションエラーの原因となることからも、医療安全上看過できない問題である。2019年8月に岩手県立中央病院の全職員(1,548名)にパワハラの実態に関するアンケートを実施した結果、「過去5か月間にパワハラを受けたことがあるか、もしくは見聞きしたことがある」職員の割合が約46%と高く、中でも「精神的な攻撃」が多いことが判明した。この結果を受け、自らの怒りの感情をコントロールする心理トレーニングのアンガーマネジメント(AM)を組織全体に導入する方針とした。2020年6月よりAM普及活動として、「今日は怒らない日」の設定、AM標語ポスターの全部署掲示、AM研修の定期的実施、AM関連メールの発信を行った。2020年11月にAM周知状況に関する職員アンケートを実施し、AMを知っていると回答したうち「AMを実践している、もしくは実践したことがある」90%(医師93%)、「AMは自分にとって役に立っている」71% (医師81%)との結果であり、立場上パワハラ加害者になりやすい医師に対してもAM実践への意識の浸透が比較的短期間に進んだことが示された。
我々の活動は自組織へAMを導入する上で極めて有用であった。しかしながら、AMの導入の結果、実際に自院のパワハラが減ったか否かは未だ明らかではなく、今後明らかにしたい。