<総  説>
家族が行う在宅自己注射、血糖自己測定の医事法制

小谷野 肇

順天堂大学医学部附属浦安病院 糖尿病・内分泌内科

【要旨】
 日本では急速な高齢化により、自己管理能力の低下した高齢糖尿病患者が増加している。これらの患者のうち在宅自己注射、血糖自己測定が必要な患者には、主に家族が患者に代わってこれらの行為を行っているのが現状である。将来さらに少子高齢化が進めば、現在のように家族から援助をうけることは困難になると予想され、国民的な議論と早急な対応が求められる。その前提として、在宅自己注射、血糖自己測定の医事法制について整理しておく必要がある。すなわち、家族が行うインスリン注射は、厚生省の通知(医事第38号)にもとづき医師法違反とはならず、家族が行う血糖自己測定は、形式的には医師法違反の構成要件に該当するが、違法性が阻却され医師法に違反しないという、中央社会保険医療協議会の行政解釈(中医協 診―1−2)にもとづいて実務運用されている。介護職員が行う在宅自己注射および血糖自己測定では、違法性は阻却されず、医師法に違反する可能性がある。