<事例報告>
呼吸器外科新設の医療経済からのメリットと投資意思決定の検討
三好孝典
茨城県民生活協同組合友愛記念病院 呼吸器外科
【要旨】
一般的に急性期病院は手術が多いと利益が多いといわれているが、具体的なデータを元に検討された報告は少ない。
今回、筆者は呼吸器外科新設に携わる機会を得た。そこで呼吸器外科医1名の増員で診療、手術が病院の経営面での貢献にどの程度期待出来るか具体的な数字を用いて検討した。さらにこのデータを元に投資の規模を、ペイオフ表を用いた定量分析を行った。
呼吸器外科開設後3ヶ月の収益は、手術約1,000万円、外来入院合わせて約2,100万円であった。経費は人件費、手術器具等の固定費約2,700万円、手術消耗品等の変動費約1,300万円で、人件費の按分は手術に関与する医師2名、看護師2名を当てはめて計算した。損益分岐点売上額は4,022万円で,手術平均単価57.3万円で割ると70例/年であった。ペイオフ表に症例数のパターン別に入力して定量分析を行うと、症例が65例/年以上あれば手術器具、光学器具を購入、40例以下の場合は手術器具のみ購入した時が最も利益が期待できた。2017年度1年間の最終的な手術症例は60例で、開設初期より手術単価が高い肺癌症例が多くなったことより総利益は、約6,000万円であった。
40例以上の手術が期待できる場合、呼吸器外科新設は病院経営の面からも有益である。