【要旨】
急性期病院への直接受診と、かかりつけ医を経由して受診する場合での急性心筋梗塞への対応の迅速さの違いについて、DPCデータと院内患者情報を用いて比較検討を行った。2014年4月以降に入院し2019年3月までに退院した患者で、急性心筋梗塞の診断で冠動脈インターベンションを受けた403人の中で、平日の日中診察時間内に来院した187症例を対象とし、他院からの紹介の有無で2群に分け、急性期病院到着時から冠動脈の再灌流までの時間(door to balloon time:DTBT)、発症から再灌流までの時間、クレアチニンキナーゼの最大値等について比較検討を行った。かかりつけ医への受診は、DTBTを有意に短縮させた(紹介群93±51分、非紹介群128±81分:P=0.010)。急性期病院への直接受診と、かかりつけ医を経由して受診する場合では、クレアチニンキナーゼの最大値に有意差はなかったものの(紹介群1045.9IU/L、非紹介群1039.3IU/L:P=0.979)、かかりつけ医を経由して受診する場合に、発症時間から閉塞した冠動脈の再灌流までの時間が有意に長かった(紹介群519±402分、非紹介群370±337分:P=0.017)。本研究により、他院からの紹介はDTBTの短縮に寄与することが示された。しかし、再灌流時間は有意に長いという課題が明らかになり、医療機能の更なる連携推進の必要性が示唆された。