<原 著>
入院時データを用いた慢性腎臓病患者の入院期間予測モデル

三尾谷裕実1) 斎藤恵一2) 坂本千枝子2) 井野 純3)

1) 戸田中央総合病院 経営企画管理室
2) 国際医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科 診療情報アナリスト養成分野
3) 戸田中央総合病院 腎臓内科

【要旨】
 慢性腎臓病患者を対象に、入院時の患者情報をDPCデータから収集し、入院初期段階で退院時期を予測するモデルの構築を試みた。DPC/PDPSが定める入院期間ごとに、退院時期の予測を行うため、入院初期段階に収集可能な「年齢」「性別」「併存疾患」「HファイルのB項目(患者の状況等)」の情報を収集した。入院期間区分を従属変数、患者状況の各項目を説明変数とした順序ロジスティック回帰分析を行った。構築された確率算出モデルは「食事摂取」「年齢」「I63・I69:脳梗塞(後遺症含む)」「N08:糖尿病性腎症」「I50:心不全」の項目の組み合わせであった。入院時の患者状況である5つの項目について評価値を入力し、算出されたパラメーターを適応することにより、5つの該当項目が多く年齢が高いほど入院期間が延長することが示された。さらに、退院確率が一番高い入院期間と実際に退院した入院期間が2期間以上離れる確率は3.3%と低く、このモデルの有用性が示された。入院初期段階で入院期間の予測ができることで、後方連携への貴重な情報となると共に、無駄のない病床管理の可能性が示唆された。