<事例報告>
注射薬ミキシング時の確認方法に対する客観的評価
−シングルチェック導入前後の安全性と所要時間比較−
飯田 恵1) 辻本朋美2) 山上優紀2)3) 大村優華2) 廣田 大2)
柴田佳純2)4) 松村由美5) 山本 崇5) 井上智子2)
1)京都大学医学部附属病院 看護部
2)大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻
3)奈良県立医科大学疫学予防医学講座
4)大阪医科大学看護学部看護学科
5)京都大学医学部附属病院 医療安全管理部
【要旨】
安全性の面から多くの病院で注射薬ミキシング時、全薬剤のダブルチェックを行うことが多いが、その効果は疑問視されている。今回特定機能病院の内科2病棟で注射薬の確認方法を、ハイリスク薬等を除いてダブルチェックからシングルチェックに変更した。本研究の目的はシングルチェック導入前後で安全性と所要時間から効果を比較検証することである。
方法は安全性として注射薬ミキシング関連インシデント報告数、内容、レベルを変更前後の各8か月間で比較した。所要時間として2病棟にカメラ2台を設置し、照合業務を24時間撮影、動画解析により照合時間を算出し、ダブルチェック期間、シングルチェック導入後2週目、導入後4週目の各5日間で比較した。
結果、インシデント報告数は1,000薬剤あたりダブルチェック期間0.09件、シングルチェック期間0.12件であり、インシデント薬剤数で比較すると有意差はなく(p=0.654)、内容とレベルも差はなかった。所要時間は1薬剤あたり照合時間の平均値がダブルチェック期間32.8秒、シングルチェック導入後2週目14.0秒、導入後4週目15.2秒で、ダブルチェック期間がシングルチェック期間に比べ有意に所要時間が長かった(p<0.01)。
結論としてハイリスク薬を除いてダブルチェックからシングルチェックに変更し前後で比較した結果、安全性は差がなく、照合時間はシングルチェック導入後に半減した。