<原 著>
診療所スタッフ(医師・看護師・医療スタッフ)のスキルが
患者満足に及ぼす影響―慢性疾患患者別アプローチ―


杉本ゆかり1) 中村 博2) 真野俊樹2)

1)中央大学大学院博士後期課程戦略経営研究科ビジネス科学専攻
2)中央大学大学院戦略経営研究科

【要旨】
 本研究は、診療所スタッフのスキルが慢性疾患患者の患者満足、継続受診意向、他者推奨意向に及ぼす影響について疾患別に分析したものである。この研究の特徴は、診療所の患者を対象とした研究であり、医師だけでなく看護師や医療スタッフのスキルの影響について分析し、更には、慢性疾患を疾患別に分けて分析したことである。
 スキルの観測変数は「知識・技能」「治療に関する説明」「態度」とし、医師のスキルのみ「精神的苦痛の軽減」を含めた。慢性疾患は循環器、内分泌代謝、脳血管、整形外科を選定し共分散構造分析により因果関係を確認した。
 調査は慢性疾患で診療所に通院する20歳以上70歳未満の男女一般生活者を対象とし、インターネットを利用したWeb質問紙により実施した。有効回答は541名(37.0%)であった。
 分析の結果、全疾患で医師のスキルは患者満足に影響を与え、患者満足は他者推奨意向を媒介して継続受診意向に影響を与えていた。しかし、看護師のスキルは患者満足に対して有意に影響しなかった。疾患別にみると整形外科疾患は患者満足が継続受診意向に対して有意な影響はなく、循環器疾患は医療スタッフのスキルが患者満足に対して有意な影響ではなかった。
 患者満足に影響を与える医師のスキルは、循環器疾患は「医師の態度」、その他疾患は「精神的苦痛の軽減」が最も重視される要因であった。一方、医療スタッフのスキルは全疾患で「医療スタッフの態度」が最も重要な要因となった。