<事例報告>
「岐阜地域医師会連携パス機構」発足9年目の状況報告
(専門医と診療所の循環型地域連携クリティカルパス)
高橋 健1) 広瀬 洋2) 森 憲司3) 堀川幸男4)
野田俊之5) 白鳥義宗6) 冨田栄一1)
1)岐阜市民病院 2)岐阜市医師会 3)岩砂病院・岩砂マタニティ
4)岐阜大学医学部附属病院 5)岐阜県総合医療センター 6)名古屋大学医学部附属病院
【要旨】
岐阜二次医療圏(人口約80万人)では2006年から「岐阜地域医師会連携パス機構」のもとで多疾患の統一地域連携クリティカルパス(以下、連携パス)運用を進めてきた。「機構」は岐阜市医師会と病院連携部門ネットワークを基盤とし、専門医による心筋梗塞、ウイルス性肝炎、脳卒中、大腿骨頚部骨折、泌尿器疾患、5大がん、糖尿病、COPDの各々独立した連携パスワーキンググループが参加し構成されている。「機構」の事務局的組織として、各グループの代表が参加し統括する「運営委員会」と病院連携部門による運用支援ネットワークがある。また、連携パスコーディネーター養成講座を開催し推進を図っている。今回、発足9年目の状況を専門医と診療所間の循環型連携パスに関して報告する。全循環型連携パスの運用数は2015年3月集計で3207件であり、6か月で約400件増加している。近年、5大がん、特に胃、大腸、乳がんの増加がみられている。受け側診療所の連携パス参加状況では、地域内全606診療所のうち、大腸がんは31.8%、乳がんは31.5%の診療所が参加しており、全循環型連携パスのいずれかに参加経験のある診療所は56.4%(342診療所)と過半数を超えている。1診療所が連携パスで連携する病院数は1〜5(平均2.01)、1診療所が受けている連携パスの種類は1〜9(平均3.42)であり、地域内で連携パス医療が徐々に受け入れられてきた状況が確認された。今後の課題はアウトカム評価、「機構」体制の維持、さらに、地域包括ケアシステムへの展開と考える。