<事例報告>
時間外選定療養費制度導入の影響
上條由美1) 篠原徹1) 的場匡亮1)
田辺聡2) 小川秀樹2) 有賀徹2)
1)昭和大学大学院保健医療学研究科
2)昭和大学病院
【要旨】
緊急を要さない軽症患者が、二次・三次救急医療機関を時間外に受診するケースは少なくない。そこで導入された時間外選定療養費による救急外来受診患者数の変化と選定療養費徴収の課題について検討する。
当院では、2011年10月1日より時間外選定療養費の徴収を開始した。時間外選定療養費導入後1年間において、1ヶ月の平均救急外来受診患者が、2005人から1785人と減少したが、1ヶ月の平均緊急入院患者数は、220人から244人へと増加した。時間外選定療養費の説明を聞いて受診を拒否した患者は、年齢が若いほど多い傾向があった。受診拒否患者のうち患者番号を把握できたのは850人で、125人は翌診療日に当院を受診し、7人(0.8%)が入院していた。
時間外選定療養費の導入により、救急受診患者は減少したが、緊急入院患者は増加していることより、入院を必要とする比較的重症な患者対応に移行できたことが推測される。これは、急性期病院の本来の役割である急性期医療を推進することができたと考えられる。しかし、症状を悪化させて翌診療日に入院を必要としていた患者が7人存在していたことから、患者に選定療養費を説明する際には、徴収金のみを強調するのではなく、同時にトリアージを行っていることを認識して、丁寧な対応が必要と思われる。