<原 著>
重大な医療事故の経験と病院の医療安全体制及び活動

吉田 愛1)2) 藤田 茂1) 伊藤慎也1)
飯田修平2) 西澤寛俊2) 長谷川友紀1)

1) 東邦大学医学部社会医学講座 2) 全日本病院協会

【要旨】
 本研究は、重大な医療事故の経験と関連する病院の医療安全体制や活動について、急性期病院と療養型病院の違いを明らかにし、必要とされる改善策や支援策を検討することを目的とした。
 2011年9月、全国の3,890病院に対し郵送法による調査を実施した。回収率は32.4%であった。重大な医療事故の経験は、急性期病院では病床規模、医療安全管理者の配置、RCAの使用等と関連し、療養型病院ではRCAやSHELLの使用と関連していた。重大な医療事故を経験した場合、急性期病院、療養型病院ともに、医療安全管理者の配置は、各種医療安全活動の実施割合に関連していなかった。重大な医療事故を経験しなかった場合、医療安全管理者が配置された急性期病院では、未配置の病院と比較し、RCAの使用、事例を基にマニュアル・事例集を作成、教育研修の担当者の配置の実施割合が高く、療養型病院では、RCAの使用、事例を基にマニュアル・事例集を作成、医療安全の教育プログラムの整備の実施割合が高かった。
 医療安全管理者の配置は、重大な医療事故を経験していない病院における医療安全体制整備に寄与している可能性がある。重大な医療事故の経験がなく、医療安全管理者を配置していないのは急性期病院の26.3%、療養型病院の67.6%を占めており、これらを対象にした支援策が、優先度の高い政策・研究課題であると考えられた。