<事例報告>
重大な医療事故に対する院内医療事故調査の報告書内容と活用についての検討

藤田 茂1) 伊藤慎也1)2) 吉田 愛1)2)
飯田修平2) 西澤寛俊2) 長谷川友紀1)

1)東邦大学医学部社会医学講座
2)全日本病院協会

【要旨】
 医療事故の原因分析では当該病院内に設置される院内事故調査委員会が重要な役割を担う。しかし、原因分析の方法や報告書の記載項目は標準化されておらず、第三者による事故調査結果の活用に困難を生じている。本研究では、報告書の記載項目の現状と、事故調査結果を第三者が利用可能とするための方策について検討した。
 全日本病院協会の全会員病院と、非会員病院のうち病床規模で層化抽出された病院を対象に、重大な医療事故の経験の有無や、報告書を作成した場合はその項目別の記載の有無等について、2011年9月に郵送法による調査を実施した。クラスター分析により記載項目の特徴で報告書を類型化した。
 回収率は32.4%(1,261/3,890)であり、そのうち34.9%の病院が過去3年以内に重大な医療事故を経験していた。報告書は記載項目の特徴によりA群(177件)とB群(100件)の2つに類型化された。A群はB群よりも、当事者を匿名化し、原因究明に外部の専門家の支援を得る傾向が見られたほか、事故の原因や再発防止策など、報告書の質に影響する重要な項目の記載率が高かった。また、回答病院の58.2%が「後日、再発防止策の実施状況と効果を評価する方法」の記載を不要と判断した。
 第三者が事故調査結果を活用するには、公表を意識した報告書の作成が求められるほか、再発防止策の実施状況と効果を評価する方法の記載率上昇が必要と考えられた。