<原 著>
転倒転落アセスメント項目の検討
―症例対照研究による有用性の評価と応用―


赤間紀子 武田和憲 島村弘宗 厚谷卓見 鈴木信子 後藤興治 齋藤泰紀

国立病院機構仙台医療センター 医療安全管理室

【要旨】
 転倒転落事故は骨折等重症の事故が多くを占め、解決の難しい課題であることが知られており、事故発生に関与する因子については様々な検討がなされている。リスクアセスメントは解決しうる課題のひとつで、その病院に相応しいアセスメントが行われているかの検証と改善が望ましい。
 国立病院機構仙台医療センターの入院患者に対して、転倒転落事故防止を目的として実施したアセスメントシート41項目の事故発生予測効果を症例対照研究により検討した。3ヶ月間にアセスメントシートを作成した患者中、転倒転落事故発生例82例を「症例」とした。年齢、性別、入院病棟をマッチングし、「症例」に対して各3例を目標に計234例を対照として設定した。転倒転落のオッズ比を算出したところ95%信頼区間の下限値が1を超えた項目は16項目で、99%信頼区間の下限値が1を超えた項目は9項目であった。多重ロジスティック回帰分析では、「衣服の着脱などに介助が必要である」、「過去、入院中に転倒・転落したことがある」、「不穏行動がある」、「車椅子・杖・歩行器・手すりを使用する」、「麻薬を使用中」の5項目が有意であった(p<0.05)。症例対照研究は、比較的少ない作業量で簡便に行うことができるので、実際に使用しているアセスメントスコアの有用性を確認するために推奨しうる方法であり、アセスメント項目の改訂にも有用であった。