<事例報告>
医薬品のリスクマネジャーとしての薬剤師の取り組み

鶴居勝也 三谷和恵 窪田真弓 山口裕幸
公立南砺中央病院 薬剤科

【要旨】
 患者への医薬品による医療事故を防止するため、薬剤師は薬剤科内および病院内の医薬品のリスクマネジャーとして積極的に関わらなければならない。薬剤科内の医薬品のリスクマネジメントでは、調剤過誤減少のために調剤のヒヤリ・ハットの内容と要因を分析して調剤過誤防止対策を見直し実施した。その結果、ヒヤリ・ハット総件数は有意に減少し、特に「計数の間違い」件数を有意に減少させることができた。また、今回実施した調剤過誤防止対策の一つである薬剤収納棚の配置や表示などの視覚的工夫は、調剤者への注意喚起とヒヤリ・ハット防止の意識改革に有効であった。一方、病院内の医薬品のリスクマネジメントでは、医薬品の不適正な管理や使用を減少させるために医薬品の破損・調製ミスの要因、件数、金額を調査した。そして、薬剤師が積極的に対策を立案し、病院全体で作業環境の改善および思い込みの排除や指示確認の徹底などの意識改革を実施した結果、医薬品の破損・調製ミスを減少させることができた。今回の薬剤科内および病院内の医薬品に関するリスクマネジメントは、作業環境改善と個々の医療従事者の意識改革という2つの対策を並行して実施することが有効であった。